武術やスポーツにおける骨盤の前傾・後傾については、実に色々な議論があります。
最近は一般的には前傾が強調されるケースが多いようですが、中国武術やバレエ、サーフィンなどでは後傾が重視される場合がよくあるようです。
まず大前提ですが、前傾・後傾と言っても、極端な前傾・後傾状態はいずれにせよおかしい筈です。また、前傾後傾のいずれかを強調するにしても、固定的になって良い筈はありません。
これだけ色々な見解があることから考えても、前傾後傾は微妙な問題で、単純に「前傾だから正しい!」といったものではないでしょう。もしそんな簡単な問題なら、とっくに結論が出ていて、反対派の人々は競技等でボロ負けして考えを改めている筈です。
さらに、前傾後傾と言っても、体がどういう姿勢にあるときの傾きなのか、で意味が違います。座っている時、立っている時、立っているけれど膝でタメを作っている時、全然違います。
これに加えて、各人の持っている元々のクセや、文化的・ミーム的に共有されている姿勢傾向に対して「補正を加える」目的で語られている言説がある、ということに注意しなければいけません。例えば「日本人は骨盤後傾の人が多い」ことを前提に「前傾しましょう」というような話です。同じ話を、骨盤前傾ぎみの人が多いアフリカンに言ったら機能が違ってきます。
このような前提の上で、骨盤前傾後傾の問題については、個人的に長いこと悩んでいます。
常歩理論では骨盤をわずかに前傾させるようですが、立禅では微妙に後傾ぎみにして仙骨を入れ、腰椎を伸ばして後ろに押し付けるように指導される場合が多いです。尻尾にバネが付いているような感覚が出てきます。
常歩の真似事のような動きで素振りをすることで、落ちるようにして前進することができるようになってきたのですが、当初はこれを骨盤前傾を意識してやっていました。
しかし立禅で出てくる感覚を応用すると、別に前傾を意識しないでも引っ張られるようにスイスイ動けます。
素振りで試してみると、どちらも可能ですが、感覚が違います。
あくまでわたし個人の感覚ですが、前傾ぎみにすると胸から引っ張られるような感じがするのに対し、後傾ぎみだと膝を引かれるようです。より正確には、ロックされていたつま先・膝がバネが弾けるように発射される感じです。
後者の場合に出てくる圧縮感覚が禅では非常に重要だと思うのですが(ちょっと詳述はできません)、わたし自身は、最近は後者の「前傾を意識しない」バージョンを重視するようになってきました。
依然として試行錯誤している最中なので、何も結論は出ていないのですが、以前よりは少しだけ全体像が見えてきた気がします。「後傾がいけない」ということのは、後傾することにより圧力なく背中が丸まったり膝がそのまま負けてしまうのがいけないのであって、そこは本質ではないのではないかと思います。これ以上は、わたし個人の探求が不十分すぎること、門派上の問題もあって一応書かないでおきます(多分、できる人にとっては当たり前すぎることで、言われるまでもないことだと思います)。
ネット上にあるものの中で、最近一番参考になったのは以下のページです。社交ダンスの方ですが、非常に頭が良く、素晴らしい分析です。絵も上手で分かりやすいです。
ダンスの見どころ?ダンスの見どころ(社交ダンス)管理人のブログ2012・投稿:975
他に関連するところでは、こんなところがありました。
骨盤 前傾 後傾 立てる 寝かせる どっち ? – NAVER まとめ
ハラに力を込める その2 | Manual Medicine 大場 弘 Blog
徹底追及「骨盤前傾」 : baseball performance labo
骨盤を後傾させるもう一つの理由: サーフィンスクール 机上で学ぶサーフィン上達法(中級者)