『この「ケンカ術」がすごい! あっさりと勝つ法則10』林悦道

 以前に『誰でも勝てる! 完全「ケンカ」マニュアル』を取り上げている林悦道先生の『この「ケンカ術」がすごい! あっさりと勝つ法則10』、読みました。

4809411974この「ケンカ術」がすごい! あっさりと勝つ法則10 (BUDO-RA BOOKS)
林 悦道
東邦出版 2014-05-02

 基本的な姿勢は前著と一緒ですが、こちらの方がより細かく技術が紹介されています。
 林先生の使う喧嘩術は見栄は地味で泥臭いですが、どれも使いやすそうで堅実なものです。武術系の練習者の方々には馴染みやすい内容だと思います。
第一章 確実に勝つための「段取り」を学べ
第二章 室内では日用品も武器となる
第三章 危機管理と読み
第四章 ケンカ術の原則1 グーよりパーが強い
第五章 ケンカ術の原則2 集中力を活かす
第六章 ケンカ術の原則3 重けりゃ強い
第七章 ケンカ術の原則4 相手の弱点を攻める
第八章 ケンカ術の原則5 下手な蹴りを目指せ
第九章 ケンカ術の原則6 近くから攻めよ
第十章 極意編 武術の奥義はケンカに使える
 個人的に気になったところをいくつか取り上げてみると、まず「相手の片目を両目で見る」。向き合った時に「相手から目を離すな」とか「いや、目を合わせてはいけない」等々の教えがありますが、「片目を見る」というのは面白いです。こうすると自分が無表情になってこちらの情報が読み取りにくくなる、とのことです。
 それから「飲み屋ののれんをくぐるように」という口伝。相手の手の動きを自分の胸の中心から遠ざけ、相手の中に入っていく要領を表したものですが、なかなか良い表現かと思います。ガッチリ受けるとそこで体が固まってしまったり、相手に力の方向を読まれることになりますし、狙いを外してスカされたりする原因にもなります。
 また、相手の正中線より少し奥側を軽く押さえることで「居着かせる」技術というのも興味深かったです。
 林悦道先生は太極拳や合気道のゆっくりとした練習を評価されています。ゆっくり動くことで正確な動作を身に付ける、体力的負担の少ない方法で時間をかけて脳にインプットする、といった、一般的にも指摘される点に加え、実戦においても「むやみに速く動かず、ゆっくり動く」ことが大事だとオッシャイます。

 実戦においての失敗の第一は、グレーゾーンからブラックゾーンへの転換期に、タイミングをとるのが早すぎる、いわゆるフライングをしてしまうことです。逆に、出ようと思っても出ることができない。これらは、原因は一緒なのです。
 焦りや緊張から、出るタイミングを読み違える。出るタイミングを一度失すると、相手に出鼻をくじかれた形となり、次も出にくくなってしまいます。
 これを避けるには、無駄な動きをしないこと。心と身体は一緒です。身体が速く動いたり無駄な動きをしたりすれば、頭の中も速く動いて無駄な考えが浮かぶ。これをパニックと呼ぶわけです。

 これは面白い指摘ですね。
 それにしても、林悦道先生は道場や喧嘩ではきっと怖い方なのでしょうが、パッと見の印象がイイ人がにじみ出ていて、個人的に好きです。