ジークンドーのいわゆる「オリジナル派」による、タイトル通りストレートリードにこだわった一冊。
実際のところ、「コンセプト派」もジュンファン・グンフーの基本については、「オリジナル派」が叩いているほど、違うことをやっている訳でもないですし、なぜこんなにエキサイトするのかはよく分かりません。そもそも、「コンセプト派」自身はそんな風に自称しておらず、「オリジナル派」から一方的に攻撃されている状態のようですが・・。
まぁ、個人的には宗派争いには興味がないので、技術的なことは素直に学ばせて頂きます。
本書ではボクシングとフェンシングの影響が重視されており、ジャック・デンプシー、ジム・ドリスコル、アルト・ナディの三人を、とりわけリーが意識していたことが示されています。デンプシーとドリスコルは、野性的なスイング・パンチが幅を利かせるようになったボクシング界を憂い、ストレートヒッティングの重要性を訴えています。アルト・ナディは20世紀初頭のフェンシング選手で、革新的なスタイルで知られていたようです。これらの影響が、リーによる書籍の書き込み、それぞれの主張内容などから考証されています。
また、「ストレート・リードのメカニクス」の項では、ストレート・リードを打ち出すステップがかなり細かく分析されており、
1 手
2 プッシュ・オフ
3 腰部の旋回と肩の伸長
4 標的との接触
5 前足の着地
6 後ろ足の着地と手の引き戻し
というステップについて、それぞれ非常に細かく解説されています。
特に「下方への力を転化する」が興味深いです。
ただ、本書で詠春拳の影響が非常に低く見積もられているのは、少し疑問です。確かにリーの方法は詠春拳の拳理とは異なるものでしょうが、「実用的ではないので捨て去った」まで言うのは言い過ぎのように感じます。ちょっと詠春拳門下の人たちに失敬な気がするのですが。
ストレートリード テリー・トム 截拳道練習館TinyDragon BABジャパン 2010-08-31 |