ネット上ではよく叩かれている長野峻也氏。
試しにどんなものかと思って一冊読んでみました。新書で出ている『使える武術』です。
本そのものは思っていたよりも普通で、批判的部分も誰かをあからさまに罵っているわけでもないです。言っている内容も、概ね真っ当で、妥当なものが多いと思います。
ただ、武道テクストの類は、多少頭が回る人間でその手の文章をよく読みこなしていれば、本人の実力とは関係なく、それなりにもっともらしいことが書けてしまうところがあります。理論が正しい人が、それを実践できているとは限りません。変な図を描いてベラボウな値段で売りつけている某氏も、その類だと思っています。彼も別に「武術家」ではないし、別に強くなくても構わないのでしょうが、商売の仕方は好きではありません。
長野峻也氏は自ら自分の実力の程を認めていますし、あくまで「武術研究家」を自称しています。そういう意味では、予め予防線を張ってはいますし、謙虚とも言えます。
そうは言っても、やはり武道・武術の世界ですし、実力の伴わない者が大きな口を叩くのは歓迎されないでしょう。長野峻也氏は素人のパンチ一発に沈むおじいちゃんのようなレベルではないと思いますし、多少なりとも「できる」人なのでしょうが、叩いている大口に見合うだけの実力があるかは分かりません。まぁ、わたしは見る目がないので、実際のところは分かりませんが。
また、この本自体は割と真っ当なのですが、ブログその他の文章を拝読すると、ネットで叩かれるのも理解できます。いい年して少し幼児的すぎる印象を受けます(それなら読まなければいいだけでしょうが)。まぁ、いい年して最強だの達人だの言っている人間は多かれ少なかれ子供っぽいのかもしれませんが・・。
ただし、この辺で多少反感を買うのは長野氏も織り込み済みのようです。「計算づく」ということでしょう。敢えて煽るような書き方をして注目を浴び、本を売るのを狙っているのかと思います。本人がそう示唆している内容のものも、ネットで見かけたことがあります。炎上マーケティングの一種でしょうか。
これも戦略ですし、商売が上手いのは結構なことなのですが、個人的には、正直、あまり良い印象は受けないです。頭の回る人だとは思うのですが・・。
ただ、色々な実力者を紹介している功績というのは、確かにあると思います。
使える武術 (ちくま新書) 長野 峻也 筑摩書房 2010-03-10 |