『常歩式スポーツ上達法』小田伸午 小山田良治 河原敏男 森田英二 木寺英史

 「常歩」研究トリオ?の小田伸午先生、小山田良治先生、木寺英史先生の共著で、他にバレーやスキーへの常歩の応用実例が収録された一冊です。木寺英史先生については『本当のナンバ 常歩』、小山田良治先生については『左重心で運動能力は劇的に上がる!』を以前にご紹介しており、特に『本当のナンバ 常歩』はオススメです。
 構成としては、
第一章 常歩の発見
第二章 常歩とは何か
第三章 常歩習得法
第四章 常歩実践レポート バレーボール編
第五章 常歩実践レポート スキー編
 となっており、第一章は三人の対談、第二章の常歩概論は小田先生が担当されています。
 『本当のナンバ 常歩』既読の読者にとっては、最大のポイントは小山田先生が担当されている「常歩習得法」です。ここに常歩習得のための基礎的なトレーニングが詳しく解説されており、大変役立ちます。
 常歩の習得には、股関節外旋のトレーニングが重要ですが、この内容が中村考宏氏が『「骨盤おこし」で身体が目覚める』で説明されている内容と非常にクロスオーバーしていて、興味深いです。要するに股割りということですが、股割りの捉え方、意義、方法など、ほとんど一緒です。中村先生は、「基本のポーズ」を作る所作として、両手を上にあげて掌を上にしたまま両側に肩の高さまで下げ、そこから掌を下に向ける、という、相撲の土俵入りのような動きを解説されていますが、これは常歩文脈で言えば、上腕外旋・前腕回内のポジションを作る動作です。強いて言えば、中村氏が指摘されている足指の握りについての部分が、小山田先生の説明にはありません。本書では他に、肩関節外旋トレーニング、四股スクワット、立禅スクワット、アヒル歩きなどが紹介されています。
 個人的に、骨盤前傾と股割り・四股踏みなどの相撲稽古・常歩・太気拳の這というのが一つにつながっていて、関連させながら練習しているのですが、それが確認されたようで有意義でした。
 骨盤前傾・後傾については、立禅との関係などで未だに完全に整理し切れていないのですが、おそらく重要なのは股関節が曲がっているというか、遊びがある、ということだと思います。四足動物は当然ながら骨盤が必ず前傾しており、股関節が曲がった状態です。そこから飛びかかろる時、膝を曲げてヨイショと行く動物はいません。ハムスリングの力で腿裏から臀部にかけてが突っ張るようにしてピョーンと飛びます。人間は直立しているため、この状態で股関節に遊びを作る、つまりそこからまだ腿裏を使って起動できるようにしようとしたら、骨盤を前傾ぎみにするしかありません。一方、股関節を曲げて腰を落としている状態では、前傾をことさらに意識する必要がなく、この状態で前傾に気を取られるとかえってお尻が出てしまう場合があります(間違っていたらすいません! まだ試行錯誤中です・・)。
 実践レポートのバレーとスキー、その前の箇所で例に取り上げられているサッカーや野球については、あまり詳しくないこともあり、ピンと来ない箇所もありますが、参考になります。
 個人的には、やはり『本当のナンバ 常歩』にある剣道での実践が面白かったですし、小山田先生は空手家でもあるらしいので、空手での具体的実践例をもっとあげて欲しいです。

4789921107常歩(なみあし)式スポーツ上達法 (SJ sports)
小田 伸午 小山田 良治 河原 敏男 森田 英二 木寺 英史 常歩研究会
スキージャーナル 2007-06