『技と知覚の丹田格闘メソッド』木澤良文

 ちょっと予想していた内容と違いました。
 肥田式強健術などを応用した武術理論で、木澤良文氏は散打などで活躍されている方のようですが、肥田式の具体的な鍛錬法が体系的に詳述されている本ではありません。
 「技の力」「知覚の力」「競技応用」の三章からなっていますが、このうち「技の力」では、基本的な体の使い方について、すぐに応用できる部分もあります。
 分解写真で解説されている、四脚立ちや座礼・立礼からの基本姿勢、沈み込む打撃、「姿勢を維持して重心を操る基本運動」として紹介されているいくつかの練習法などがあります。また、筆者のブロック割りなどの動画映像を分解写真とした解説があります。
 「知覚の力」の章は観念的な部分が多く、具体的技術を詳述したものではありませんが、文章として非常に読ませます。ちなみに、イラストを筆者自身が描いているのですが、これがヘタウマっぽくてイイ味出しています。
 「競技応用」の章では、丹田格闘技的戦術が分解写真も交えて解説されています。ここには各武術による丹田使用例というパートがあり、その中で無影拳の熊野英生氏による実演があります。この熊野氏は、大昔に目撃させて頂いたことがあるのですが、物凄い勢いで蹴りを出し続ける選手で、どういうスタミナなんだ!と驚いたことがあります。
 最後に、木澤氏の武術遍歴に関する短い章があります。紆余曲折を経て学んできた経緯が率直に語られています。
 部分部分で色々と参考になるところはありますが、編集的にはちょっとまとめ方の甘いところもあります。これは筆者ではなく編集側の問題だと思いますが。

4862204368技と知覚の丹田格闘メソッド―武術的潜在能力を全開させる!
木澤 良文
BABジャパン 2009-08