懐かしい、黄色い表紙の愛隆堂です。
まぁなんと申しますか、愛隆堂の一連の中国武術本にはかなりアレなものもあり、具一寿氏も本当は日本人とのことです。
ただ、具一寿氏が良いのは、それがいわゆる意味での中国武術かどうかはともかく、少なくとも一定レベル以上にはちゃんと強い人だということです。同じく愛隆堂から沢山本を出している某A氏のように、鶏ガラのような自称拳法家ではありません。
彼が(達人かどうかはともかく)一定レベル以上には強い、ということは、写真を見るだけでも分かりますが、わたしはたまたま具一寿の関連と結構縁があり、ご本人に直接お目にかかったことこそないものの、直接会った、教えを受けた、という人を複数知っています。顔もヤンキー顔です。
彼の伝承やら経歴やらが怪しげだったとしても、ご大層な正当性を掲げて本人は青瓢箪みたいな人よりはずっと良いでしょう。
内容ですが、よくある中国武術本のように套路の解説を並べている訳ではなく、基本的な打法や防御からの受け返しなど、分かりやすい例で解説しています。套路も載っていますが、これは具一寿氏が考案した型で、詳述もされていません。ちなみに、この套路の分解写真の中で、一枚だけ具一寿氏が笑っている写真があって、ちょっと面白いです。撮影の時に誰か笑わせたのでしょうか。
なにより、具一寿氏は文章が面白いです。
有名中国武術家の何人かを思い切りdisっているのも読者としては面白いのですし、套路偏重の中国武術を批判する下りは誠にもっともです。
ウェイトと組手ばかりやっている者と、高級な套路と高級な打法を学んでいる者がいると、中国武術家はすぐ前者をバカにするが、実際には前者の方が絶対強い。「そんなやり方では年をとってから強さを維持できないだろう」という者がいるが、それでも四十歳くらいまでは変わらないだろう、そこから先は本人の努力次第だ、そもそも四十過ぎて戦わなければならない方がどうかしている、と、ある意味非常に常識人なことを言っています。
ちなみに、ご本人はオランダ人と結婚してオーストラリアに移住された、と聞きます。オーストラリアで道場を構えているという噂を聞いて、ちょっと調べてみたのですが、分かりませんでした。
具一寿氏の系統の道場が以前は京都・大阪にあったのですが、現在は不詳です。
今は改定され「カンフーバイブル」という本になっています。
格闘技の基礎を固める カンフーバイブル 具 一寿 愛隆堂 2007-02 |