『仙骨姿勢講座―仙骨のコツは全てに通ず』吉田始史 高松和夫

 「うんこ我慢の姿勢」で身体が変わる!という、面白いキャッチの本です。
 要は仙骨を締め、骨盤を後傾させ、首を後ろに固定することで背中側の力をうまく使えるようになる、ということです。武道・武術を齧った人間なら、大体思い当たるところがあるのではないでしょうか。中国武術だとよく言われることですね。
 改めてこうしてまとめられると、実に分かりやすく、なかなか示唆に富んだ本です。仙骨の締めの効果を確認できる色々な「実験」が収められているのも良いです。後半では呼吸との関係、各種スポーツへの応用、トレーニング方法なども書かれています。このトレーニング方法のいくつかは、わたしもやるようになりました。
 ただ、椅子に座る姿勢などは、本書中でも「締めるというより立てる」と書いている通り、骨盤角度だけ考えるとかえって猫背になってしまうので、注意が必要かと思います。
 また、当たり前ですが、やたらめったら骨盤後傾すれば良いわけではなく、中立を保つことが重要なので、既に後傾ぎみの人(お尻が平たくなる人)には適さない気もします。
 とても役に立つ本ではあるのですが、この手の「姿勢・整体本」は、常に話半分くらいで聞いておいた方が良い、と個人的には考えています。教えは受けるけれど、100%は信じない、ということです。
 というのも、なぜか「姿勢・整体」系の話は、最初は真っ当なのにいつの間にか暴走して、「何でも治る万能治療」のような話になることがしばしばあるからです。姿勢に限らず民間療法系の話ではよくありますが、「ガンが治る!」とかまでいくと、どう考えても眉唾です。
 こうした暴走が何に起因するのか分かりませんが、あまりに何でも「治せる」ものは、胡散臭い場合がほとんどです。実際的・具体的な部分だけを貰って、暴走しそうになったらすぐ忘れる方が賢明です。
 まぁ、この本は幸いそんな壮大なスケールの話ではないので、良心的だと思いますが。

486220211X仙骨姿勢講座―仙骨のコツは全てに通ず
吉田 始史 高松 和夫
BABジャパン出版局 2006-12