『本当のナンバ 常歩』『常歩式スポーツ上達法』をご紹介した木寺英史先生による常歩剣道の本です。
基本的な内容は、当然ながら他の書籍とかぶるところが大きく、前半は基礎、後半は剣道での初歩的実践、という構成は『本当のナンバ 常歩』と同じですが、より剣道での実践を中心に据え、トレーニング法などがより細かく紹介されています(『本当のナンバ 常歩』は歩き方・立ち方自体、既存ナンバ理論の紹介と批判などが重視されている)。
剣道を目的とするなら当然ですが、トレーニング法が詳しく紹介されているため、他の書籍と併せて参考にすると役立ちます。
以前に、常歩の基礎トレーニングと骨盤おこしトレーニングがかなり被ることは指摘しましたが、胴体力トレーニングとも共通する内容が多いです。「伸ばす・縮める」そのまんまの内容もありますし、骨盤コロコロ体操とそっくりの練習もあります。
軽々に結びつけては、どちらの練習者の方からもお叱りを受けるかもしれませんが、根本的なところは通底していない方が不思議でしょう。特に胴体力トレーニングの有効性を改めて確認できたような思いです。
ちなみに、「伸ばす・縮める」的な動きが出来たら、体重移動を逆にして「伸ばす・縮める」という練習が紹介されています。つまり、伸ばす側ではなく縮める側に体重を乗せ、伸ばす側の足を浮かせる、という状態です。これは、木寺先生のおっしゃっている通り、武道的な動作ではしばしば見られる状態です。
構成としては、
第一章 常歩(二軸動作)を学んで体の使い方を変える(理論編)
第二章 常歩に適した体になるためのトレーニング(基本編)
第三章 常歩剣道を体得する(実践編)
第四章 常歩剣道の真髄とは(上達編)
となっており、第二章の基礎トレーニング、第三章の剣道での実践が中心的内容です。
第二章のトレーニングが非常に重要なことはもちろんですが、第三章での膝の抜きを使った打法の詳説がとても役立ちます。この辺の実践については「常歩による木刀素振り」などで書きました。
実践編後半の、実際に相手と向き合っての技法については、剣道素人なのでよく分かっていませんが、それまでの基本の打ち込み等は、剣道以外の武道実践者にとっても役立つ内容です。
実際、これを稽古していったところ、「前に落ちる」感覚の踏み込みを体得できました。
まだ組手の中で自然に出せるレベルではありませんが、不気味なくらい力を抜いて、落下するように滑らかに進むことができます。更に練習を積めば、かなりの距離を一気に詰めることもできそうです。あまり一気に進むのはマンガ的ですが、練習の一環としては面白いと思います。
木寺先生が本書の中でも繰り返しおっしゃっていることですが、わたし自身が実践してみて感じるのは、本書で言えば第二章、つまり体作りが一番重要、ということです。技法的なところの形を真似しようとしても、元々体ができている人以外は遠回りになります。骨盤の角度ができ、股関節の緩めることができれば、自然に「前に落下」できます。
常歩・二軸では、股関節外旋が重視されますが、外旋と考えるより、まず「緩める」ことが大事だと思います。緩んでいない人は、そもそも緩んでいないということに気づいていません(わたしがそうでした)。色々試していて、ある時フッと股関節がイイポジションにできた時、今までずっとサイドブレーキを引いて運転していたような感覚がありました。
まぁ、わたしは元々センスのない人間なので、キチンと稽古されている方は元から出来ていることかと思いますが、本当に体作りが9割だと思います。
実践 常歩(なみあし)剣道―進化するナンバ 木寺 英史 MCプレス 2006-03 |