『限界突破!太気会天野敏 組手再入門 第1巻 4つの視点で変える!組手攻略編』天野敏

 書籍『組手再入門―いま、武術を諦めないために』(紹介記事)のDVD版ですが、単に書籍に内容を映像にしたものではありません。重複する部分もありますが、異なるところもあります。
 項目は以下の通り。
■ コンセプト
(何のために組手をするのか/どういう人に見てもらいたいか/何処を・何を見てもらいたいか)
■ 組手の視点1―間合い
・構えの留意点(腕を顔の前に置き守る/腰を柔軟にする)
■ 組手の視点2―姿勢
・姿勢の留意点(上体の留意点/重心の留意点)
■ 組手の視点3―変化
・変化の留意点(左右の変化/上下の変化/重心と上体の変化)
■ 組手の視点4―打拳(勁力)
・打拳の留意点(振動―腹と腰の力/打拳の種類)
■ 組手の留意点
・意識の在り方・移動・変化・攻撃・防御
■ 組手の実際(組手1-5)
 各項目の冒頭に天野先生とヘッドギアをつけたお弟子さんの組手風景が映し出されます。この組手が相当迫力があります。天野先生はスタスタと普通に歩くように近づいていくのですが、これが何とも不思議な感じです。傍から見ているのでまだいいですが、相手としては実に気持ちが悪いでしょう。
 また、普通に考えたらとてもパワーのある打撃を打てる体制に見えないのに、変な角度からバシーンと掌底が入れます。多分、そのいくつかでは相手の視界から完全に消えているのではないでしょうか。スタスタ歩いて、すれ違いざまについでのように無造作に出した掌が、すごいイイ音させてヒットしています。ちょっと違いますが、ハメドのボクシングのようなところがあります(ハメドほどトリッキーな訳ではないが、一見無理な体制からでも強い打撃が打てている、実は無理な体制ではない、という意味で)。
 雰囲気として武道というよりテニスか何かやっているようにも見えます。テニスのフルスイングで打たれているような感じです。
 各項目の内容について、簡単にメモしておきます。
■ 組手の視点1―間合い
①腕を顔の前に置き守る
 間合いというのがあるのか? 間合いを潰すには?
 飛び込まない、普通に歩くように入る
 なぜ入れるのか? 手が自分を守っているから。
②腰を柔軟にする
 背中が伸びている構えでは動けない
 サッカーやバスケの姿勢を見よ、いつでも対応できる腰
 これが気持ちにも影響する
 例えば掴まれた瞬間に腰が落とせること
■ 組手の視点2―姿勢
①上体の留意点
 背中に力が入る、反り返るようになってはいけない
 柔軟体操ができないような身体で組手をやっても始まらない
 体を傾けすぎてはいけない
②重心の留意点
 重心は常に親指の付け根、その上に腰が乗り、上体が乗る
 ベタッと力で立つのではなく、微妙なところに立つ
 小さなところに立っていればそこから動き始めることができる
■ 組手の視点3―変化
①左右の変化
 変化は必ず重心の転換を伴う
 向きあって構える時も必ず変化がある、常に動いている
 変化の中に体を置いておき、流れの中で対応する
②上下の変化
 人間の眼は上下の変化に弱い 相手が消えるようにも見える
 ふんばらず楽に
③重心と上体の変化
 重心の変化が体全体の変化を引き出す
 確実に左右に体重が乗せる
■ 組手の視点4―打拳(勁力)
①振動―腹と腰の力
 力は振動 伝わっていく その震源地は体の中心、つまり腹や腰
 体重が移動する力
 まず腹と腰が動き、重心が動き、肩が動き、手が動く
 ボールを投げる時のように
②打拳の種類
 ストレート系 平手 上から打つ場合 
■ 組手の留意点
ー意識の在り方
①相手の見方・捉え方
 相手のどこをどういう風に見るか
 離れている時はどこでも構わない
 間合いに入っていく瞬間は胸元・喉元の動きの少ないところを見る
 しかしそこに注意を集中するわけではなく、全体を見る
 人は顔を見てしまうと色々読み取ろうとしてしまい、考えてしまう
 相手が打ってきた場合も手を見てはいけない
②予断を持たない
 こう来たらこうしよう、などと考えない
 楽な状態で何事にも対応できるように、自分の体にまかせる
ー移動・変化
①歩くように入る
 飛び込んで入ると入る瞬間に隙だらけになる、当たるも八卦当たらぬも八卦
 自分が一番変化できるように歩くようにして入る
②常に左右に転換する
 流れの中にいる、いつでも動いている途中にいる
 しっかりと重心が動く
③必ず左右に変化する
 受けると同時・打つと同時に左右に変化できること
 自分の重心が左右に動き続けている
 気持ちが相手に因われないで自分に素直になる
④留まらない
 がっちり構えると手と上体が動いても足が動かない
 楽な状態に自分に置く
ー攻撃・防御
①感じたら先ず打つ
 相手がいつ打つかなど分からない、打ったのに対応するのでは遅い
 相手が何をするかではなく、相手が何をしようとしていると自分が感じたか
 自分が思った瞬間に手が出ること、待たない
 相手の問題ではなく自分の問題
 自分の気持ちがそのまま動きになること
②一つでは終わらせない
 少なくとも三つくらいまでは連続して打てる状態に体を保つ
 打った瞬間には良い状態に戻っている
③蹴りからの変化
 単体で蹴る、蹴ってから打つのは無駄が多い
 蹴りながら入るがそこから変化できること
 蹴り始めた時に蹴ることを念頭にしていない
 自分の可能性を最後まで手放さない
 固執しない
④攻撃はブロックしない
 ガードを固めて我慢すると、一発で終わらないとどうにもならない
 力を入れると動かなくなる
 顔の前の二本の手、体全体の動きで捌く、自分の手を活かす
⑤相手の攻撃に対する応対
 相手の攻撃に対して1差すか2受け入れる、迎えるように動く
 手から肘までを活かす
 より自分の中心に近いところで受ける、体全体で受ける
 掌が空いているので受けた腕も使えるしもう一方も使える
 常に変化の中で相手を捉える
■ 組手の実際(組手1-5)
 お弟子さんとの組手が五本映しだされ、インタビュアーと天野先生の会話音声が被せられます
ーどこでタイミングを見ているか?
 相手が何をしようとしている瞬間
ー距離感が大事?
 距離感というより相手の気持ちの変化
ー手の位置が相手の手を抑えるようにしているが?
 まずは相手の手を抑える
ー抑えるというのは実際にふれる以前から?
 そう、イメージの中で抑える
ー相手のどこを見ているか?
 胸元や動かないところ、接触した時は変化する
ー相手がどこを見ているか感じるか?
 感じる時もある、力量を測ることも
ー一方的な展開になるが、なぜ?
 変化しなければいけない瞬間に止まっているとだめ、その瞬間を(弟子には)見つけて欲しい
ー打とうと思って打つのか?
 何も考えていない、その時の互いの変化で
ー相手の変化をどこで掴むか?
 最初に見るのは気持ちだろうが、難しい
ー攻撃が止まらないが?
 手が動くのではなく体の中心で動いているから
ー先生の腰の位置はあまり上下に動かないが?
 上半身の柔軟性
ー真っ直ぐ入っているようで入っていない?
 真っ直ぐ入ると打たれる、必ず歩くように左右に変化して入る
ーステップではない?
 ステップではない
ーお見合いのシーンが少ないが?
 組手の稽古をしているのであってお見合いをしているのではない、お見合いする暇はない
ー闇雲に真っ直ぐ出るのでは意味がない?
 もちろん、自分を的にするのではない
ー左右に変化しながら、ということ?
 相手を正面に捉えるが相手から正面に捉えられない位置に
ー打たれる距離の中でどれだけ変化できるか、ということ?
 そう、離れてお見合いしてもダメ
ーだが無理に入ってもいけない?
 そう
ー自分の課題はどこに持っているか?
 余分な力を持たない、中心が動き続けていること
ーどういったところを見て欲しいか?
 色んな組手をやる人がいるので違いが見えてくるかもしれない

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天野敏
ビーエービージャパン 2008-01