『限界突破!太気会天野敏 組手再入門 第2巻 まだやり直せる組手再生編』天野敏

 「組手再入門」DVDの第二巻です。
 第一巻で組手、第二巻で立禅や這など太氣拳の基本稽古、という構成が面白いです。基本から積み上げて組手に至る、という方向ではなく、組手でどう動くかという問いが最初にあり、その解として立禅や這などの稽古が来る、ということでしょうか。
 書籍『組手再入門―いま、武術を諦めないために』(紹介記事)では、こうした太氣拳の基本稽古については巻末に付録的に簡単にまとめられているだけですが、DVDでは第二巻の方が長いです。
 構成としては以下の通り。
■組み手とは
■間合いを突破する
■立禅とは?
・立禅の組み方・立禅における静止とは・意識の在り方
■半禅
・半禅とは?・半禅の組み方
■揺り
・揺りとは?・揺りのやり方
■這い
・這いとは?・這いのやり方
■練り
・練りとは?・練りのやり方
(前後/交互/両手/左右)
■打拳
・腰と腹の力で打つ
■推手
・推手のやり方・組手で活かす
 各項目の内容を簡単にメモしておきます。
■組み手とは
 組手には色々な要素が必用だが、気持ちの問題も重要
 体の動きと同時に、メンタルも解決していかなければならない、これも体の中に育てないといけない
■間合いを突破する
 人と向きあえば必ず距離がある
 ほとんどの場合「ここから先は危険」という間合いがあるということを前提に組手をしている
 外から入って打つ、ということを考えていては、いつまでも足踏み
 間合いをなくす、ということ
 相手も自分も打てる状態になってから組手が始まる
 打たれず打つ状態を一瞬でも作ろうとしなければならない
 サンドバッグを打つ稽古をしても、間合いの問題をクリアしてから活きてくるもの
 この問題を解決しないと一歩も進めない
■立禅とは?
 立禅で得られたものを失わずに動けないといけない
 空間を育てる、動きの可能性を引き出す
 立禅には語り尽くせない要素があるがいくつかを取り上げる
 立てたらいいとか何分立ったらいいとかではなく、質を求める
 これが動きだけでなくメンタルの問題を乗り越えるためにも必要
①立禅の組み方
 形が上手になることではなく、その中に何を見つけられるかが重要
 足は肩幅くらい、並行かやや内股
 足の指で軽く地面を掴むと、わずかに足の裏が緊張、足首が緊張、それが膝の裏、股関節の緊張につながる
 腰を落とすのではなく、地面を掴んで体を下に引き下ろす
 膝でものを挟む感じ、両膝のくぼみで挟む
 膝の力で挟むのではなく、足指・足首の力で挟む
 これが自分の力の方向を知ることにつながる
 足の小指から親指に向かう力
 重心は足の親指と付け根
 足の指の上に腰が乗り、その上に状態が乗る
 背中が緊張して固くなってはいけない、上体が使えなくなる
 背中が緩む、お腹が緩む
 腕は肩の高さ、肩の前くらい
 手は丼を持ったように、手の親指の根本に十円玉を乗せても落ちないように
 手首から肘へがわずかに角度を持っている
 自分の手をあげているというより首でぶら下げている感じ
 人差し指と中指の間にゴムがありそれを僅かに引っ張っている
 一番力の出る関節の角度 90度より曲がることはない
 良い姿勢は骨格だけでなく内蔵、喉、気管、食道が自然になるもの
 ものを飲み込もうとしている瞬間のように
 胃袋が喉からぶら下がっている
 腸が骨盤の上に乗っかっている
 指先のゴムを引っ張るのは根本の背骨に近い中の力
 柔らかに物を抱えていて、それが膝にも乗っている
 自分の前の空間が膝まで届く、膝に手が届く
②立禅における静止とは
 自分の前の空間
 実はとても不安定な状態で立っている
 静止しているようで静止していない、静止しているように見えるだけ
 スキーのボーゲンのように拮抗した結果静止している
 上下左右前後への動きが常に準備されている状態
 長い棒を垂直に立てて掌に乗せているように
 洗練された動きが静止
③意識の在り方
 実際の組手で動揺すると出来ることも出来なくなる
 気持ちを立禅で作る
 視線の収め方、気持ちをいかに置くか
 遠くのもの、音、見えないものにも注意を払う
 集中して他が見えなくなるのではなく、気持ちを解放する
 気持ちがぼーっとして何をやっているのか分からなくなる
 この気持ちを組手でもなくさないようにする
■半禅
 止まっているところから動きへの架け橋
 左右対称でなくなっても立禅と同じ感覚を引き出す
・半禅の組み方
 立禅で両膝で挟んでいたものを、前後の膝で挟む
 丁八歩の方向が重要 足の小指から親指に向かう方向 歩くことに由来した方向
 前手は前足の上、後手は後足の延長線上
 人間の体は必ずしもまとまった自然体から力が出るものではない
 立禅でも下が閉じていて上が広がっている、上は内側に行こうとする力を持っている
 下半身と上半身の捻れ
 上は下よりわずかに開いている
 常に外から内に対する力がある
 立禅同様、多くの動きが拮抗して結果として止まっているように見える
 常に自分が揺れ動いているという感覚
■揺り
 立禅・半禅の感覚を失わずに動く
 大きな木を揺らすように
・揺りのやり方
 半禅から指先を自分の正面に向ける
 視線の目標に人差し指と中指が軽くゴムでつながれている
 目標を引っ張り押し出す
 膝で挟んでいる感覚が重要、挟んでいれば膝は動かない
 人間の体は、中心からより遠いところを関節を通して動かす
 腰の力は股関節を通して膝を動かすもの
 だから腰の力で腰を動かしてしまってはそこで終わり
 腰の力で全身を動かすには膝を動かさない
 手ではなく元の部分、背骨の奥、腰の力で動かす
 引く時は手首の上下両方に力を感じて引っ掛けるように
 力を入れず遠くのものを動かすように、禅の時の感覚を失わないように気持ちで動かす
■這い
 普通の歩き方と武術的な歩き方は違う
 普通の歩き方は重心がほとんど振れない
 武術的な歩き方では重心が移り切り、無駄があってはいけない
・這いのやり方
 伸び上がることも下に行く事もできる高さで
 思ったよりも腰を落とした方が腰の力が引き出される
 確実に重心が片足に乗っている瞬間があり、次の瞬間にはもう片方の足に乗れる
 軸足は中心だが、もう片方の足も中心からぶら下がっている、それが瞬時に入れ替わる
 前足で地面を掴みとり引き込む
 足の幅だけ自分の重心が確実に移動する
 手は相手を押しとどめるように、何かを支えるように
■練り
 動中に静あり静中に動あり
①前後
 体全体で押し出し、引き寄せる力で体を前に
 組手で入っていく時に、後ろ足で蹴るのではなく自分で自分を呼び込むように
②交互
 手が自分の中心を行き過ぎないこと
 手が額から腰ぐらいをカバーする
 人差し指・中指は常に前を指していること、そのために手首が柔軟に動くこと
③両手
 一つの動きが次の動きを誘発する
 入った瞬間こそ良い状態でいなければいけない
④左右
 常に円を描く、始まりはあっても終わりはない、区切りを付けない
 気持ちを切らない
 高さは眼の高さの時も腰の高さの時もある
 力尽きたので、最後の打拳と推手はご覧になってください・・。長くなりすぎました。

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天野敏
ビーエービージャパン 2008-02