『合気、その論理と実際』吉丸慶雪

 これも懐かしい。
 わたしは合気道も大東流もまったくやったことがないので、実際に稽古されている方が見たらまた違う見方なのでしょうが、ハッとする部分も色々ある一方、何でもかんでも「伸筋力」みたいに説明されているのは少しゲッソリします。
 言っている内容自体は概ね正しいのではないかと思うのですが、「屈筋系で力んで形を作ってはいけない」というのは合気にかぎらず当たり前の話で、それでいてかつダラ~とせずに停止筋肉?をいかに使うか、という、その具体的方策が重要な筈です。合気の例が色々出ているので、合気をやっている方には分かりやすいのかもしれませんが、それ以外にとってはそれほど具体的メソッドが得られるということはありません。ただ、理屈自体は真っ当だと思います。
 ただ、吉丸慶雪さんは著書で「日本人は屈筋系、外国人は伸筋系」みたいな(逆だったかな?)非常に素朴な分類をされていて、こうした発想は非常に危険です。確かに民族・文化ごとにミーム的に伝承された身体操作というのがあり、意識せずとも染み付いた動きというのがありますが、それは「日本/外国」とか「日本/西洋」のような単純な話ではないでしょう。それなら韓国は? インドネシアは? パキスタンは? セネガルは?と、いくらでも問うことができて、それぞれの地方や文化にそれぞれに微妙に異なる身体操作があるはずです。これを「屈筋/伸筋」「日本/外国」みたいな割り方をするのは、あまりにも単純化しています。骨法の堀辺さんも「日本人はつま先で歩くが西洋人はかかとで歩く!」とか大雑把な話をしていましたが、話半分にしておかないといけません(堀辺さんは思想的にああいう方なので、もうそれでいいのかもしれませんが・・)。

4583034075合気、その論理と実際
吉丸 慶雪
ベースボールマガジン社 1997-07